イオンモール新利府 「鳥の巣箱」の設置と生物多様性保全の取り組み

イオンモールは、地域の皆さまとともに、持続可能な社会に向けて「脱炭素社会の実現」「サーキュラーモールの実現」「生物多様性の保全」の取り組みを推進しています。今回は、地域の方々とともに「鳥の巣箱の設置」を通じて生物多様性の保全活動に取り組む、「イオンモール新利府」をご紹介します。

急減するいきものたちを守るために

(左から)
イオンモール新利府(北館) オペレーション担当
平山・岡崎・有馬

2024年10月、環境省と日本自然保護協会は、全国の里山でスズメなど16種類の鳥やチョウが、絶滅危惧種の基準に相当するスピードで急激に減少していることを発表した。かつて身近にいた鳥やチョウが、温暖化などのさまざまな原因によって姿を消している。これらのいきものたちを守るためには、“人間といきものが、ともに暮らせる街づくり”が欠かせない。
※「イオン ふるさとの森」…イオンでは新しい店舗がオープンする際、お客さまとともにモールの周りにその土地本来の樹木を植樹する活動「イオン ふるさとの森づくり」を実施。

イオンモール新利府(宮城県)では、2022年より、お子さま向けのイベントとして、保全目標種として選定する鳥類の中からシジュウカラの巣箱を制作するワークショップを開催。制作した巣箱は、参加者といっしょに「イオン ふるさとの森」※などに設置している。鳥の巣箱の設置は、樹木だけでなく、その土地の生態系全体を保全する試みの一つだ。2023年10月に巣箱を取り外した際には、シジュウカラが巣づくりをした痕跡を初めて発見。翌年の春には、シジュウカラが巣箱に出入りする様子や、巣箱で育つヒナの姿も確認できた。
イオンモール新利府の有馬と岡崎は、「巣箱にはシジュウカラが使った痕跡はあったのですが、なかなかシジュウカラを目視することができませんでした。しかし、翌年には親鳥が巣箱に出入りする様子や、ヒナの元気な鳴き声を見聞きすることもあり、みんなで『本当にいる!』と大興奮しましたね」と微笑む。

当モールでは、地域のお子さまを対象に、年間を通してさまざまなワークショップを実施している。鳥の巣箱に関わる取り組みとしては、巣箱を制作するワークショップのほか、設置した巣箱や野鳥の観察会を夏頃に実施。ヒナが巣立った秋には、巣箱を取り外して掃除をし、痕跡を観察。そして冬には再び新しい巣箱を制作し、設置している。
平山は、「これからも地域のお子さまに、シジュウカラをはじめとする身近ないきものに、少しでも愛着を持っていただける機会を提供できたらうれしい」と話す。

巣箱作成イベントの様子

年間の流れ

シジュウカラも暮らしやすい街づくりに向けて

株式会社エコロジーパス
取締役 北澤 哲弥さん

同社では、イオンモール新利府の保全目標種を選定するにあたり、モール周辺にどのようないきものが生息しているのか、周辺の森や草地など7箇所で現地調査。文献情報も含め全部で63種の鳥が確認できました。その中から「在来種であること」「樹林性の種であること」「糞害・食害のリスクがないこと」「人や物への警戒心が強くないこと」など、さまざまな条件を設定したところ、ヤマガラやエナガなど、14種類の鳥たちが一致。そのうち、愛らしい見た目で地域の方々からも愛され、モール敷地でも営巣が期待できる「シジュウカラ」の保全を目的に巣箱を設置することにしました。

シジュウカラは、国内では北海道から沖縄まで、海外ではヨーロッパなど温帯を中心に幅広いエリアに生息し、低い山や街中でよく見られる鳥です。近年はスズメなど身近な鳥が数を減らしており、街中の自然ではシジュウカラも大切な存在です。宮城県宮城郡利府町は自然豊かな地域である一方、イオンモール新利府の周辺は市街地や水田が広がっており、鳥が安心して羽を休められる、まとまった樹林までは約800~1000mほどの距離があります。シジュウカラのような小型の鳥が飛べるのは、一度に200〜400mほど。遠くまで飛ぶには中間地点で休憩する必要があります。そこで、森と森の中間地点にあるイオンモール新利府が森を再生し鳥の巣箱を設置することで、シジュウカラにとっても暮らしやすい街づくりに貢献しています。

地域の方々と取り組む共創のイベントに

当モールでは、シジュウカラ保全の取り組みを通して、地域のさまざまな専門家との連携にも力を入れている。例えば、鳥の巣箱の制作では「南三陸YES工房」にご協力いただき、南三陸の間伐材を使用している。同社は、東日本大震災後から南三陸の木を活用したモノづくりに取り組む企業だ。「巣箱制作ワークショップ」では、間伐材について学びながらものづくりを楽しんでいただくとともに、震災の記憶をつなぐ機会としている。さらに、「巣箱観察ワークショップ」では、日本野鳥の会の皆さまに利府町の環境や野鳥の生息についてお話いただいている。平山は「イオンモールが率先して地域を巻き込んだ取り組みを行うことで関わりを深め、さらに地域の方々をつなぐ“ハブ”としての役割も果たしていきたい」と語る。

また、地域のお子さまとのワークショップだけでなく、モニタリングや定期観察も積極的に実施している。2024年3月には、モニタリング用のカメラを設置。カメラの映像を確認しながら、手持ちカメラでも撮影して観察を続けた。11月に巣箱を取り外すと、30個の巣箱のうち3〜4個が巣づくりに使われていることが確認できた。
有馬は、「今後は巣づくりからヒナの誕生までの一連の流れをお客さまに映像で見ていただけるように、モニタリングを強化することが課題」と話す。平山は、「イオンモールを普段からご利用いただいているお客さまを含め、広く発信していきたい」と意気込む。
地域の方々が自作し設置した巣箱に愛着を感じ、シジュウカラを見にくることをきっかけに、イオンモール新利府に足を運んでくださる———。そんな姿を実現するために、今後も継続的に保全活動に取り組んでいく。

イオンモールの「まちのいきもの+(プラス)」

イオンモールでは、緑あふれる環境に配慮した施設づくりを行い、さまざまないきものが共生する豊かな未来をめざして、生物多様性の保全に力を入れています。その取り組みの一つとして、「いきもの共生事業所®認証(ABINC認証)」の取得を推進。同認証は、「一般社団法人企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)」が作成・登録した「いきもの共生事業所®推進ガイドライン」に基づき、生物多様性に配慮した緑地づくりなどの取り組みを第三者的に評価・認証するもので、現在イオンモール新利府北館を含めて全国で22モール※が認証を取得しています。 ※2024年2月時点

〜お客さまとともに地域の森といきものを育む〜イオンモール和歌山・和歌山大学 「イオン ふるさとの森 いきもの調査」

「イオン ふるさとの森づくり」による植樹活動は、1991年にマレーシアから始まり、これまでにイオングループトータルで12,554,305本を植樹しました(2023年2月末時点)。イオンモールにおいても、新しいモールがオープンする際、それぞれの地域に自生する木々や自然環境に最も適した樹木を、お客さまと一緒に植える活動「植樹祭」を実施しています。緑あふれる環境に配慮した施設づくりを行うことで、全国のモールでは地域の“森”として、豊かな生態系が形成されています。
また当社では、生物多様性の取り組みの一環として「いきもの」を保全するアクション「まちのいきもの


(
プラス
)

」を推進。今回は、イオンモール和歌山が和歌山大学と連携して取り組む「いきもの調査」についてご紹介します。

「いきもの調査」とは

現在温暖化などの影響により、1年間で40,000種もの生物が絶滅しているとされています。こうした状況を受け、イオンは地域の皆さまが生き物に触れる機会や、生物保全へのアクションをとるきっかけをつくることを目的に、2021年から「いきもの調査」を開始。各店舗で従業員が地域の皆さまと共に、「イオン ふるさとの森」に生息する鳥、昆虫、植物などを見つけて撮影し、AIで生き物を判定できるアプリ「Biome(バイオーム)」※に投稿するもので、2022までにイオングループの計101店舗が参加し、1,318種のいきものが見つかった。この取り組みでは、「イオン ふるさとの森」を定点観測することで、地域の生物分布の変化や外来種の拡大状況などをデータベース化し、活用することも見込まれている。当社では、2022年から「いきもの調査」に取り組み、16モールで実施した。さらに、2023年は20モールに拡大し、うち10モールが行政や地域の大学と協働で実施された。

※バイオームは、日本の約93,000種の動植物に対応している日本最大の生き物データベース。撮影したいきものの種類によってレア度が判定される。A〜Eまでの各ランクに分かれてポイントが得られ、ポイントを貯めるとユーザーのレベルがアップする仕組み。

イオンモール和歌山・和歌山大学が共創

イオンモール和歌山
(左) オペレーションマネージャー 糸山
(右)オペレーション担当 田村

2023年10月7日、イオンモール和歌山(以下、当モール)では、当モールから至近にある和歌山大学と協働で「いきもの調査」を実施した。和歌山大学との出会いは、遡ること10年前の開業時(2014年)から。和歌山大学システム工学部で生態系観測や地理情報・デジタルデバイスの融合について研究されている原教授から、「イオン ふるさとの森」を研究のフィールドとして調査したいとお声がけいただいた。以来、環境緑化事例の視察や利用者へのインタビュー調査、卒業研究での生物調査等、研究教育の場としても活用していただいてきた。その縁から、当モールで2022年に初めて実施した「いきもの調査」に参加いただくことになった。
「いきもの調査」を担当する当モールオペレーション担当の田村は、「2022年開催時にご好評いただいたため、2023年のいきもの調査へも参加しませんか? とお声がけしたところ、学生さんから『今年はぜひ運営側として参加したい』と返答をいただきました。学生さんが当社、運営側の活動に興味を持っていただけるのは、新たな発見でした」と話す。

当日は、原准教授ら教員や専門店従業員、そのご家族、イオンチアーズクラブで活動するお子さまに加え、「バイオーム」を手掛ける株式会社バイオームの開発者など、計25名が調査に参加。司会・進行を和歌山大学の学生2名が担った。原准教授からいきものに関するクイズ、「バイオーム」の開発者からアプリの使い方や開発の背景についての説明があり、その後調査がスタート。

それぞれがグループ毎に分かれて、原准教授やバイオームの開発者から生き物や環境について教えてもらいながら探索した。探索では、コガネムシの仲間の幼虫が育つほど土壌が育ってきていることや、絶滅が危惧される蝶がすぐ近くで舞っていることなども発見された。田村は、「小学生や中学生はもちろん、大人の方も多く参加され、夢中になっていたのが印象に残っています。また、専門家の方から環境づくりに関する学術的なお話などを聞きながら調査をすることができ、面白かったというお声もいただきました」と振り返る。調査終了後は各グループの代表者の方が見つけた生き物について発表、学生からは実施後の感想を発表した。和歌山大学と共に創り上げていった「いきもの調査」。オペレーションマネージャーの糸山は「今回、大学の先生方をはじめ、さまざまな団体の方にご参加いただいたことで私たちも発見が多く、視野が広がりました。それぞれにとって意義のあるイベントにすることができて良かったです」と話す。

参加者の集合写真

調査の様子

いきもの調査に参加された和歌山大学からのコメント

(左から)
和歌山大学 経済学部 設楽さん
和歌山大学 地域連携部局 後藤先生
和歌山大学 システム工学部 原准教授

(原教授):
イオンモールさんとは、最寄りの商業施設として開業時より研究教育の中で地域を深めてきました。今回、バイオームを活用した調査に参加することで、今後の自身の研究へも大きなヒントが見つかりました。

(設楽さん):
私は自然豊かな環境で育ったことから、里地里山の景観や生態の保全、子どもたちへの環境教育に関心を持つようになりました。今回、学内で呼びかけを見かけ、自分の関心に非常に近いと思い参加を決めました。運営する中で、子どもたちから大人までが、生き物探索に夢中になっている様子を見て、環境教育の楽しさや可能性を感じました。また、普段から利用しているイオンモールで、生き物探しを通して多様なコミュニケーションが生まれ、いつもとは違うワクワクを感じました。

(後藤先生):
実際に取り組んでみて、大学内のキャンパス内でも展開できれば面白い結果が得られそうだと思いました。専門分野の学生だけでなく、広く学生や教職員に呼びかけ、定期的に調査すれば生き物のデータ蓄積に活かされるのではないか、また、近隣の小学校や、イオンモールと大学の中間にある藤戸台の住宅地などでも調査を実施し、比較検証などもおもしろいのではないかと感じました。

(原准教授):
大学内外で多地点動物カメラによる哺乳類や鳥類の観測も継続して実施しています。案外イオンモールの敷地にも動物がいるかもしれず、今後も情報共有や成果の報告会などが実施できれば、より調査に厚みがでるのではないかと期待しています。

さらに規模を広げ、より地域共創のイベントに

今後の「いきもの調査」について、オペレーションマネージャーの糸山は「今後は一般のお客さまも巻き込んで広げていきたいと思います」と意気込む。イオンモール和歌山では、2023年5月に、紀州備長炭の原料になる木「ウバメガシ」をお客さまとともに植樹するほか、備長炭を身近に感じていただけるワークショップなどを開催し、その魅力をPRした。今後は、いきものの探索だけでなく、こういった環境に関するワークショップの同時開催なども検討しており、取り組みを広げていく。

次世代の子どもたちのためにきれいな海を守る海洋保全活動「海神ネプチューン大学2023」

イオンモールは、様々ないきものが共生する豊かな未来をめざし、生物多様性の保全に力を入れています。新しい店舗がオープンする際には、地域に自生する土地本来の樹木をお客さまと植える「イオン ふるさとの森」植樹祭を実施。この活動にプラスして「まちのいきもの」を保全するアクションを推進し、生態系と環境を配慮した施設づくりをめざしています。
福島県いわき市の小名浜港に隣接する「イオンモールいわき小名浜」では、市民参加型まちづくり組織「小名浜まちづくり市民会議」に参画し、地域一体となって次世代の子どもたちのためにきれいな海を守る活動を実施しています。
今回は、その取り組みをご紹介します。


「小名浜まちづくり市民会議」の一員として、活気あふれる都市の拠点づくりに取り組む

イオンモールいわき小名浜
(左)  営業マネージャー  賀川
(中央)ゼネラルマネージャー 進藤
(右)  営業担当      若月

イオンモールいわき小名浜(以下、当モール)は、東日本大震災で甚大な被害を受けた小名浜港周辺地域の一体的な整備・再生プロジェクトの一環として2018年に開業。「環境水族館アクアマリンふくしま」・「潮目の駅 小名浜美食ホテル」・「いわき市観光物産センターいわき・ら・ら・ミュウ」の3施設と隣接し、いわき市の掲げる「東日本復興のシンボル」として位置づけられている。また、小名浜の市民や企業によるまちづくり組織「小名浜まちづくり市民会議」にも開業当初より参画し、活気溢れる都市の拠点づくりに向けて積極的に活動してきた。

小名浜周辺地域は、古くから港町として海に生活が支えられてきた。そのため、きれいな海を守るため、市民や地域団体による海岸のゴミ拾いが盛んに行われている。当モールではこの活動に賛同するとともに、地域の子どもたちが、活動を通して学びに繋がる企画ができないか模索。2020年に「アクアマリンパーク」の美しさを次の世代に伝えることを目的に設立された「アクアマリンパークファウンデーション」に参画。その活動の一環として、地域のお子さま対象とした講義とゴミ拾いを組み合わせた体験型イベント「海神ネプチューン大学」が開校された。イオンモールいわき小名浜の営業マネージャーの賀川は、「イオンモールは2011年12月に開発事業者として決定以降、まちづくりの一員として地域に溶け込んできました。海神ネプチューン大学についても、市民会議に参加する地元企業や団体の代表者が月1回集まり、取り組み内容を検討。志の高い地域の皆さんと連携する中で多くの学びを得て、共に取り組んできました。」と話す。

海岸の清掃活動に参加する「海神ネプチューン大学」入学者の皆さま

学んで、行動する体験型イベント「海神ネプチューン大学」

「海神ネプチューン大学」では、いわき市の協力のもと、地域のお子さまとその保護者が、近隣の海岸に行き清掃活動を実施し、環境に関する講義を受ける。講義では、「海神ネプチューン大学」の校長を務める「潮目の駅 小名浜美食ホテル」社長の鈴木さんや、「アクアマリンふくしま」の飼育展示統括部長の岩田さんなど、地元企業の代表者の皆さまが海の生きものとプラスチックごみの関係性などを教える。イオンモールいわき小名浜の営業担当の若月は、「私自身も改めて海洋環境保全について、地元の専門家の皆さまに教えていただきながら取り組みました。」と振り返る。


2022年度は取り組みがブラッシュアップされ、6月の開校式を皮切りに年間を通して4回開催。親子やボランティアスタッフ85人が入学し、講義や海岸清掃に加え、いわき市リサイクルプラザ「クリンピーの家」への視察研修なども実施、行動範囲を広げた。若月は、「子どもたちにとって海でのゴミ拾いは発見の連続。好奇心を満たすとともに、なんでこんなところにこのゴミが落ちているのだろう?と環境について考えるきっかけになっています」と話す。

イオンモールから発信! 海を守る活動の輪を広げたい

2023年度の「海神ネプチューン大学」はさらに内容を充実させ、より多くの子どもたちが参加できるように、前期と後期に分けて各3回開講。それぞれ講義と海岸清掃、リサイクルプラザへの視察が行われる。6月24日に開催された第1回では、合計52人が参加した。
さらに別枠として、身体を動かしながらごみ拾いに挑戦する「ネプチューン大学運動会」、拾ってきた海洋ごみを使った工作イベント「ネプチューン大学工作部」など、年間14回のイベントを実施する。また、新たに企画を計画しているのが、「~わたしたちの海・街をきれいに!~クリーンアップの輪を広げよう!大作戦!」だ。地元では、たくさんの団体が海岸や街の清掃活動をしている。彼らの活動をアピールするために関係団体に声を掛け、当モールの館内で活動報告をしたり、ワークショップを行う予定だ。「様々なお客さまが集まるイオンモールから発信することで、活動の輪を広げ、きれいな海を守りたいと思っています。なるべく多くの子どもたちにこの取り組みに関わる機会を増やしていきたいです。」と意気込みを語る。

また、イオンモールいわき小名浜の責任者であるゼネラルマネージャーの進藤は、「当モールでは、地域の皆さまから愛され、信頼される存在となるために、モール一丸となって取り組んでいます。今後も、行政や市民会議の皆さまをはじめ、地域の皆さまと共に、持続可能な社会の実現に向けてアクションを起こし続けていきたいと思います。」と笑顔で話した。

イオンモールでは、毎月11日に「クリーン&グリーン活動」として専門店の従業員の皆さまとともに、モール周辺の歩道や公園、植樹帯などの清掃を行っています。海の近くに立地するモールでは、地域の皆さまと共に近隣の海岸まで足を伸ばすなど、活動を拡大しています。今後も当社は、地域の皆さまと共に地域の環境美化に努めるとともに「まちのいきもの」の保全に取り組みます。

例)イオンモール幕張新都心(千葉県):2022年7月に「幕張の浜 ビーチクリーン活動」を実施。今年は9月実施予定。
  イオンモール富津(千葉県)   :1998年より年2回(6月11日/9月11日)「富津海岸清掃」を実施。
  イオンモールりんくう泉南(大阪府):2011年・2022年11月に「マーブルビーチ一斉清掃」を実施。
※雨天時など中止となった回もございます。

飲食店から出る生ごみを資源に「食品リサイクルループ」構築をめざして

飲食店や食品専門店の売れ残りや食べ残し、加工・調理の過程で生じた残さなどの食品廃棄物。これらは通常、可燃ごみとして処分されます。さらに、処分についてはその過程となる運搬や焼却で二酸化炭素を排出され、環境負荷につながっています。
イオンモールでは、持続可能な社会の実現に向けた「サーキュラーモール」の取り組みとして、これらの食品廃棄物を“ごみ”ではなく、資源として堆肥化し、地域を循環する「食品リサイクルループ」の構築に挑戦しています。
今回は、2022年4月に福岡県北九州市でオープンした地域創生型商業施設「THE OUTLETS KITAKYUSHU」での取り組みについてご紹介します。

「生ごみ」から発生する環境負荷の低減に挑む

THE OUTLETS KITAKYUSHU
オペレーション担当 宮城

THE OUTLETS KITAKYUSHU(以下、「当施設」)は、未来の街づくりに向けて、様々な社会課題に対し、地域やお客さまと共に取り組む『SUSTAINABLE ACTION』を実践。その一つが「フードロス削減」への取り組みだ。当施設では、食品廃棄を減らすことを目的に、お客さまが食べきれなかった料理を持ち帰るための「お持ち帰りバッグ」をフードコートで配布。また、廃棄された食品を再利用するため、生ごみを堆肥にかえる「バイオ式コンポスター」を導入している。

当施設内の飲食店では、平均で平日約200kg、土日で約280kgの生ごみが排出される。バイオ式コンポスターを導入することで、このうち約50~80kgにのぼる“野菜くず”などの食品残さが堆肥へ生まれ変わる。コンポスターに入れて一日経つと、そのほとんどが微生物により分解される。それを空気にさらして二次発酵させれば、堆肥の完成だ。

この取り組みについて、オペレーション担当の宮城は「北九州市は、国家戦略プロジェクトの一つである『環境未来都市』として選定されています。当施設としても地域のより良い未来のために、周辺環境に与える負荷を少しでも軽減しようと様々な課題を抽出する中で、毎日排出される“生ごみ”の資源化に着目しました。当施設の食品廃棄物から生成した堆肥を地域の農園などで撒いていただき、そこの農作物が当施設の飲食店で提供される―そんな“食品リサイクルループ”の輪を地域へ広げることを目標に取り組みを開始しました。」と語る。

当施設のバイオ式コンポスター

「持続可能な農業」を志す農園と共鳴

開業から1年間、生ごみから生成された堆肥は施設内の植栽や、昨年10月に開催された「イオン ふるさとの森づくり」植樹祭において活用された。その後堆肥の品質調査を経て、今年5月、実際に地元農園への提供が始まった。

宮城は、「地元の農園へ当施設の堆肥を使っていただけないかお声がけする中、当施設の所在する北九州市から車で約90分ほど離れた福岡県嘉麻市の『ゆっちゃん農園』と、嘉麻市立熊ヶ畑小学校から使っていただけると返答がありました。ゆっちゃん農園は、取れた作物の種を植えて次の世代を栽培する『固定種』といわれる品種を代々栽培されるなど、持続可能なループを体現している農園。また、熊ヶ畑小学校は、豊かな自然に囲まれた環境を生かし、授業の一環として畑で野菜づくりをしており、当施設の食品リサイクルループの取り組みに共感いただきました。農園や小学校からご協力いただけたことは、今後にもつながりたいへん有意義です。」と振り返る。

食品ロスを考えるきっかけづくりに

食品ロス削減の取り組みはまだまだ発展途上だ。現在、ゆっちゃん農園では堆肥の効果を図る実証実験として、とうもろこしを栽培。この結果を踏まえ、9月に新たに立ち上がるぶどう農園でも、この堆肥の活用が予定されている。今後は、より多くの堆肥を作れるよう、生ゴミ回収の仕組みを整える計画だ。
宮城は、「今後この農園で育ったぶどうを当施設の飲食店で活用してもらうほか、地域の皆さまにこの取り組みを知っていただくイベントなどを開催し、食品ロスについて考えていただくきっかけとなれば」と意気込んだ。“食品リサイクルループ”が地域に広がる未来に向けて、取り組みは続く。

ゆっちゃん農園で栽培されたとうもろこし

まだまだ広がる!「食品リサイクルループ」

THE OUTLETS KITAKYUSHU以外にも、イオンモールではさまざまな「食品リサイクルループ」の取り組みが推進されている。

2021年に開業したイオンモール白山(石川県)では、各専門店へごみの分別についての説明会を実施し、理解を深めていただいている。そして、館内で排出される可燃ごみの約10%に当たる約3,200kg(月間)の分別された生ごみ全てを、白山市を拠点に廃棄物処理事業に取り組む「トマスク・アイ」で堆肥化。堆肥は近隣の「安井ファーム」に販売され、ブロッコリーが栽培されている。今後はブロッコリーに加えてお米の生産にも活用されるとともに、白山市の地産地消課や「産学連携協力に関する覚書」を締結している石川県立翠星高校とも連携し、ブロッコリーを活用したメニュー開発を行うなど、地域のお客さまに持続可能な取り組みへの認知度を向上を目指す。

イオンモール津南では、飲食店「龍神丸 イオンモール津南店」と「炙り牛たん 万」、近隣の三重県立明野高校が主導して、飲食店9店舗の野菜くずの回収・堆肥化が始まっている。2021年にイオンモール津南で開催された「三重県立産業教育フェア」でのコラボメニューの提供をきっかけに、「メニューに使用する野菜の栽培から携わりたい」という想いで、3者が「三笑おっさんずファーム」を結成。明野高校の耕作放棄地にて共同栽培をスタートした。
さらに、明野高校が取り組む持続可能な循環型農業の一環として、イオンモール津南の飲食店の生ごみの堆肥化まで踏み切った。

ごみを資源として循環させる社会に ~イオンモール座間「サーキュラーモール」の取り組み~

イオンモールは、モール内で発生する廃棄物の削減に取り組み、再利用する仕組みも構築しています。目指すのは、お客さまや専門店、地域社会と共創し、イオンモールを起点に、地域で集まるさまざまなモノを “資源”として循環させる社会。イオンモールでは、“まちの資源循環”として、「サーキュラー(循環)モール」を実現するための取り組みを進めています。
例えば、6Rs<Rethink(考え直す)、Repair(修理する)、Returnable(購入先に戻す)、Reduce(減らす)、Reuse(再利用する)、Recycle(再資源や製品化する)>に基づき、脱プラスチックの取り組みや衣料品回収、フードロスに取り組んできました。
今回は、フードコートから出る「紙ごみ(燃えるごみ)」に着目し、行政や地域企業と連携したリサイクルへ繋げた「イオンモール座間」(神奈川県)の取り組みをご紹介します。

フードコートから出る紙ごみをリサイクル

イオンモール座間
オペレーションマネージャー 川端

イオンモールのフードコートでは、毎日大量のごみが発生する。脱プラスチックの取り組みとして、2020 年からはプラスチック容器を紙容器に、プラスチックストローを紙ストローに変更し対応してきたが、その一方で「紙ごみ」の増加が新たな課題として浮上。イオンモール座間オペレーションマネージャーの川端もこの問題に頭を抱えていた。「プラスチックごみが減っても紙ごみが増えてしまったら、ごみ問題の解決には至りません。
コストを考えたら紙ごみを燃やしてしまうほうが良いのですが、二酸化炭素の排出量が増えてしまう。地球温暖化への影響を考え、紙ごみを資源に変えなければならないと思いました」と語る。

イオンモールと座間市のタッグで実現

イオンモール座間は、抱える課題に対し神奈川県座間市と情報交換を開始。座間市でも、燃えるごみの処理能力がすでに限界に達し、ごみの削減が喫緊の課題になっていたこ
とから、両者がタッグを組み、紙ごみを再生紙に循環する取り組みが始まった。

課題となったのは、フードコートから出る紙ごみに付着する食べかす等の汚れや、紙容器の防水・耐水加工。紙ごみの中でも特にリサイクルが難しく、紙を洗浄する工程も必要だ。そこで座間市が、古紙再生分野で世界最高レベルの技術と、紙ごみの洗浄と再資源化の知見を持つ静岡県富士市の「コアレックス信栄(株)」をイオンモール座間に紹介、資源化に向けた取り組みがスタートした。

但し、イオンモール座間からの紙ごみを洗浄工程へ進めるには、回収量が足りなかったため、これまで燃やされることが多かった座間市の家庭から出る汚損した紙などの難再
生古紙と合わせ、収集運搬・圧縮梱包。2023年1月から座間市が市内で排出されるミックスペーパー(燃やされることが多かった紙類)の基準を見直し、再生紙としてリサイクルする事業スキームを構築した。再生紙はトップバリュのトイレットペーパーとして全国のイオンで販売している。

新たな連携の枠組みを全国へ

ご協力いただいた 座間市役所の皆さん

座間市リユース推進課の中嶋さんは「本取り組みは全国初の事案だったこともあり、実施にあたっては多くの課題がありました。しかし、“フードコートから出るごみ”のリサイクルと紙資源での有効活用は、その社会的意義を含め公益性が極めて大きいため、賛同してくださった皆さまと共に、一つひとつの課題を解決したことで実現できたものと考えています。」と話す。

この取り組みは、自治体やパートナー企業が連携した資源循環で全国初の実証事業だ。座間市も、この取組が全国的に浸透することで、事業系のごみを減量させる第一歩になると考えている。

「イオンモールだけでは実現できないことも、自治体とコアレックスさんと協力することで実現することができました。この連携の枠組みを地域ごとにオリジナル化し、他のモールにおいても水平展開することで、日本全国の廃棄物削減と資源循環に貢献できる取り組みになるのでは」と川端。

なお、イオンモール座間と座間市は、イオンモール座間のオープン(2018 年)を機に「包括連携協定」を締結。今回の取り組みについてもその一環だ。今後も両者で協力し、より多くの地域の皆さまにこの取り組みを知っていただくことで、環境負荷の低減やサーキュラーエコノミーの推進へのご協力を広めていく。

イオンモールが、地域とともに持続可能な社会の実現に向けて取り組む「サーキュラーモール」の実現には、まだ多くの課題が残されています。地域のくらしに身近なイオンモールだからこそできることをひとつずつ行動に起こす、そんな取り組みを全国のモールで今後も継続していきます。