地域をつなぐ。未来をつむぐ。

飲食店から出る生ごみを資源に「食品リサイクルループ」構築をめざして

飲食店や食品専門店の売れ残りや食べ残し、加工・調理の過程で生じた残さなどの食品廃棄物。これらは通常、可燃ごみとして処分されます。さらに、処分についてはその過程となる運搬や焼却で二酸化炭素を排出され、環境負荷につながっています。
イオンモールでは、持続可能な社会の実現に向けた「サーキュラーモール」の取り組みとして、これらの食品廃棄物を“ごみ”ではなく、資源として堆肥化し、地域を循環する「食品リサイクルループ」の構築に挑戦しています。
今回は、2022年4月に福岡県北九州市でオープンした地域創生型商業施設「THE OUTLETS KITAKYUSHU」での取り組みについてご紹介します。

「生ごみ」から発生する環境負荷の低減に挑む

THE OUTLETS KITAKYUSHU
オペレーション担当 宮城

THE OUTLETS KITAKYUSHU(以下、「当施設」)は、未来の街づくりに向けて、様々な社会課題に対し、地域やお客さまと共に取り組む『SUSTAINABLE ACTION』を実践。その一つが「フードロス削減」への取り組みだ。当施設では、食品廃棄を減らすことを目的に、お客さまが食べきれなかった料理を持ち帰るための「お持ち帰りバッグ」をフードコートで配布。また、廃棄された食品を再利用するため、生ごみを堆肥にかえる「バイオ式コンポスター」を導入している。

当施設内の飲食店では、平均で平日約200kg、土日で約280kgの生ごみが排出される。バイオ式コンポスターを導入することで、このうち約50~80kgにのぼる“野菜くず”などの食品残さが堆肥へ生まれ変わる。コンポスターに入れて一日経つと、そのほとんどが微生物により分解される。それを空気にさらして二次発酵させれば、堆肥の完成だ。

この取り組みについて、オペレーション担当の宮城は「北九州市は、国家戦略プロジェクトの一つである『環境未来都市』として選定されています。当施設としても地域のより良い未来のために、周辺環境に与える負荷を少しでも軽減しようと様々な課題を抽出する中で、毎日排出される“生ごみ”の資源化に着目しました。当施設の食品廃棄物から生成した堆肥を地域の農園などで撒いていただき、そこの農作物が当施設の飲食店で提供される―そんな“食品リサイクルループ”の輪を地域へ広げることを目標に取り組みを開始しました。」と語る。

当施設のバイオ式コンポスター

「持続可能な農業」を志す農園と共鳴

開業から1年間、生ごみから生成された堆肥は施設内の植栽や、昨年10月に開催された「イオン ふるさとの森づくり」植樹祭において活用された。その後堆肥の品質調査を経て、今年5月、実際に地元農園への提供が始まった。

宮城は、「地元の農園へ当施設の堆肥を使っていただけないかお声がけする中、当施設の所在する北九州市から車で約90分ほど離れた福岡県嘉麻市の『ゆっちゃん農園』と、嘉麻市立熊ヶ畑小学校から使っていただけると返答がありました。ゆっちゃん農園は、取れた作物の種を植えて次の世代を栽培する『固定種』といわれる品種を代々栽培されるなど、持続可能なループを体現している農園。また、熊ヶ畑小学校は、豊かな自然に囲まれた環境を生かし、授業の一環として畑で野菜づくりをしており、当施設の食品リサイクルループの取り組みに共感いただきました。農園や小学校からご協力いただけたことは、今後にもつながりたいへん有意義です。」と振り返る。

食品ロスを考えるきっかけづくりに

食品ロス削減の取り組みはまだまだ発展途上だ。現在、ゆっちゃん農園では堆肥の効果を図る実証実験として、とうもろこしを栽培。この結果を踏まえ、9月に新たに立ち上がるぶどう農園でも、この堆肥の活用が予定されている。今後は、より多くの堆肥を作れるよう、生ゴミ回収の仕組みを整える計画だ。
宮城は、「今後この農園で育ったぶどうを当施設の飲食店で活用してもらうほか、地域の皆さまにこの取り組みを知っていただくイベントなどを開催し、食品ロスについて考えていただくきっかけとなれば」と意気込んだ。“食品リサイクルループ”が地域に広がる未来に向けて、取り組みは続く。

ゆっちゃん農園で栽培されたとうもろこし

まだまだ広がる!「食品リサイクルループ」

THE OUTLETS KITAKYUSHU以外にも、イオンモールではさまざまな「食品リサイクルループ」の取り組みが推進されている。

2021年に開業したイオンモール白山(石川県)では、各専門店へごみの分別についての説明会を実施し、理解を深めていただいている。そして、館内で排出される可燃ごみの約10%に当たる約3,200kg(月間)の分別された生ごみ全てを、白山市を拠点に廃棄物処理事業に取り組む「トマスク・アイ」で堆肥化。堆肥は近隣の「安井ファーム」に販売され、ブロッコリーが栽培されている。今後はブロッコリーに加えてお米の生産にも活用されるとともに、白山市の地産地消課や「産学連携協力に関する覚書」を締結している石川県立翠星高校とも連携し、ブロッコリーを活用したメニュー開発を行うなど、地域のお客さまに持続可能な取り組みへの認知度を向上を目指す。

イオンモール津南では、飲食店「龍神丸 イオンモール津南店」と「炙り牛たん 万」、近隣の三重県立明野高校が主導して、飲食店9店舗の野菜くずの回収・堆肥化が始まっている。2021年にイオンモール津南で開催された「三重県立産業教育フェア」でのコラボメニューの提供をきっかけに、「メニューに使用する野菜の栽培から携わりたい」という想いで、3者が「三笑おっさんずファーム」を結成。明野高校の耕作放棄地にて共同栽培をスタートした。
さらに、明野高校が取り組む持続可能な循環型農業の一環として、イオンモール津南の飲食店の生ごみの堆肥化まで踏み切った。


はてなブックマークにシェア LINEにシェア Twitterでシェア Facebookでシェア