Partner 08
産学・研究機関

千葉大学とのウォーキング共同研究
(P46-47)

モールウォーキングがもたらす変化を
学術機関と協力して調査する。

花里 真道さま
(国立大学法人千葉大学
予防医学センター)

長く健康に過ごすためには、なるべく外に出かけて身体活動量を高め、いろいろな人と時間を過ごすことが推奨されています。特にご高齢の方が外出する目的で最も多いのはお買い物ですから、ショッピングで体を動かして、いろいろな体験や情報にふれることが大切です。そうした意味では日常生活の中で商業施設が地域住民の健康のために果たせる役割は大きく、積極的な情報発信が期待されています。ショッピングモールではお買い物をするだけでも館内をよく歩きますし、そのうえでウォーキングを通して健康づくりを支援するプログラムを提供していることには重要な意義があると考えます。

モールウォーキングのプログラムは専用アプリが提供するサービスの一部ですから、アプリを使い始める方の中には健康や運動への関心が低い方もいらっしゃいます。地域全体の健康増進のためには、むしろ日頃あまり興味がない方に働きかけて運動習慣を取り入れていただくことも必要ですから、ユーザーの多様性にもポテンシャルを感じますね。生活の中で自分の歩数を意識して関心を持つだけでも身体活動量の増加に寄与する可能性があると言われています。

健康に関わる生活行動の中で、近年の研究で特に重視されているのが「人との繫がり」です。幅広い世代が楽しめる大型の商業施設が地域にあることが、ご家族やご友人と連れ立って出かける機会を提供し、関係性を維持している面もあるのではないでしょうか。店員さんとのちょっとした会話などが生活に彩りを与えてくれることもあるでしょう。こうした人との繫がりも健康づくりの重要なファクターです。ネット通販や宅配サービスが普及して、家にいながらにしてできることが増えている一方で、これから「人が集まる場所」は社会にとってますます重要な意味を持つことになると思います。

松岡 洋子さま
(国立大学法人千葉大学
予防医学センター)

モールウォーキングに関する膨大なデータについて統計学的な分析を試みました。その結果、モールウォーキングプログラムへの参加が約1,200歩の歩数増加と関連する可能性があることがわかりました。

特に目立って歩数増加の可能性が示された高齢者の方にとって、ショッピングモールの館内を歩くのは事故などのリスクが少なく、天候や気温の影響を受けにくく、休憩する場所もあるなど多くの利点があります。アメリカの疾病予防管理センター(CDC)も、ショッピングモールはウォーキングをするのに理想的な環境であるとの見解を示しています。

ショッピングモールという日常生活の中にある場所を歩くついでにポイントがたまる仕組みは、どなたでも使いやすいという点で多くの人の健康づくりに寄与すると期待できます。

※本研究結果は、2024年1月30日(現地時間)に米国医師会の国際医学雑誌『JAMA Network Open』に掲載されました。(Matsuoka Y, Yoshida H, Hanazato M. JAMA Network Open 2024.)

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CX創造ユニット 営業統括部
北下 裕基

当社では2018年頃からお客さまに健康目的で館内を歩いていただく「モールウォーキング」を推進し、全国のモールにウォーキングコースを設置しました。その次のステップとして、2020年11月より専用アプリにウォーキング機能を実装しています。これによってアプリをご利用いただく方の属性や歩数などのデータが取得できるようになりましたので、モールへのご来店や専用アプリのご利用がお客さまの健康行動にどう関連しているかを学術的に検証するために、千葉大学さんと共同研究を開始しました。

当社としては、データを集めて分析するだけでなく、それをどう活用し、アウトプットとしてお客さまにどう伝えるかも重要だと考えます。そうした観点も含めて、毎月の千葉大学さんとのミーティングでは、こんなことを調べたい、こういう研究をしてはどうかといった議論を重ねてきました。専用アプリの機能や活用した施策が、お客さまの健康や意識にどんな効果をもたらすか把握できていなかったので、モールを起点にしてお客さまの歩行を促進する可能性が確認できたのは当社にとっても意義のあることでした。

こうした客観的な研究結果のデータに基づいて、約1,200歩がどれほどなのか、どのくらいの距離で、それを複数回続けるとアイスクリームと同等のカロリーになるなど、健康への関心が薄い方々にも伝わりやすいコミュニケーションも行っております。より多くの方に専用アプリの機能を広く認識していただき、いずれは自治体や関連団体とも協力した取り組みを行いたいですね。元気に暮らす方が増えるのは地域の活性化にも繫がりますので、特別に意識をしなくてもモールへご来店いただくことが健康増進につながるような施設のあり方を考えてまいります。

Life Design Report 2024
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