地域をつなぐ。未来をつむぐ。

イオンモール新利府 「鳥の巣箱」の設置と生物多様性保全の取り組み

イオンモールは、地域の皆さまとともに、持続可能な社会に向けて「脱炭素社会の実現」「サーキュラーモールの実現」「生物多様性の保全」の取り組みを推進しています。今回は、地域の方々とともに「鳥の巣箱の設置」を通じて生物多様性の保全活動に取り組む、「イオンモール新利府」をご紹介します。

急減するいきものたちを守るために

(左から)
イオンモール新利府(北館) オペレーション担当
平山・岡崎・有馬

2024年10月、環境省と日本自然保護協会は、全国の里山でスズメなど16種類の鳥やチョウが、絶滅危惧種の基準に相当するスピードで急激に減少していることを発表した。かつて身近にいた鳥やチョウが、温暖化などのさまざまな原因によって姿を消している。これらのいきものたちを守るためには、“人間といきものが、ともに暮らせる街づくり”が欠かせない。
※「イオン ふるさとの森」…イオンでは新しい店舗がオープンする際、お客さまとともにモールの周りにその土地本来の樹木を植樹する活動「イオン ふるさとの森づくり」を実施。

イオンモール新利府(宮城県)では、2022年より、お子さま向けのイベントとして、保全目標種として選定する鳥類の中からシジュウカラの巣箱を制作するワークショップを開催。制作した巣箱は、参加者といっしょに「イオン ふるさとの森」※などに設置している。鳥の巣箱の設置は、樹木だけでなく、その土地の生態系全体を保全する試みの一つだ。2023年10月に巣箱を取り外した際には、シジュウカラが巣づくりをした痕跡を初めて発見。翌年の春には、シジュウカラが巣箱に出入りする様子や、巣箱で育つヒナの姿も確認できた。
イオンモール新利府の有馬と岡崎は、「巣箱にはシジュウカラが使った痕跡はあったのですが、なかなかシジュウカラを目視することができませんでした。しかし、翌年には親鳥が巣箱に出入りする様子や、ヒナの元気な鳴き声を見聞きすることもあり、みんなで『本当にいる!』と大興奮しましたね」と微笑む。

当モールでは、地域のお子さまを対象に、年間を通してさまざまなワークショップを実施している。鳥の巣箱に関わる取り組みとしては、巣箱を制作するワークショップのほか、設置した巣箱や野鳥の観察会を夏頃に実施。ヒナが巣立った秋には、巣箱を取り外して掃除をし、痕跡を観察。そして冬には再び新しい巣箱を制作し、設置している。
平山は、「これからも地域のお子さまに、シジュウカラをはじめとする身近ないきものに、少しでも愛着を持っていただける機会を提供できたらうれしい」と話す。

巣箱作成イベントの様子
年間の流れ

シジュウカラも暮らしやすい街づくりに向けて

株式会社エコロジーパス
取締役 北澤 哲弥さん

同社では、イオンモール新利府の保全目標種を選定するにあたり、モール周辺にどのようないきものが生息しているのか、周辺の森や草地など7箇所で現地調査。文献情報も含め全部で63種の鳥が確認できました。その中から「在来種であること」「樹林性の種であること」「糞害・食害のリスクがないこと」「人や物への警戒心が強くないこと」など、さまざまな条件を設定したところ、ヤマガラやエナガなど、14種類の鳥たちが一致。そのうち、愛らしい見た目で地域の方々からも愛され、モール敷地でも営巣が期待できる「シジュウカラ」の保全を目的に巣箱を設置することにしました。

シジュウカラは、国内では北海道から沖縄まで、海外ではヨーロッパなど温帯を中心に幅広いエリアに生息し、低い山や街中でよく見られる鳥です。近年はスズメなど身近な鳥が数を減らしており、街中の自然ではシジュウカラも大切な存在です。宮城県宮城郡利府町は自然豊かな地域である一方、イオンモール新利府の周辺は市街地や水田が広がっており、鳥が安心して羽を休められる、まとまった樹林までは約800~1000mほどの距離があります。シジュウカラのような小型の鳥が飛べるのは、一度に200〜400mほど。遠くまで飛ぶには中間地点で休憩する必要があります。そこで、森と森の中間地点にあるイオンモール新利府が森を再生し鳥の巣箱を設置することで、シジュウカラにとっても暮らしやすい街づくりに貢献しています。

地域の方々と取り組む共創のイベントに

当モールでは、シジュウカラ保全の取り組みを通して、地域のさまざまな専門家との連携にも力を入れている。例えば、鳥の巣箱の制作では「南三陸YES工房」にご協力いただき、南三陸の間伐材を使用している。同社は、東日本大震災後から南三陸の木を活用したモノづくりに取り組む企業だ。「巣箱制作ワークショップ」では、間伐材について学びながらものづくりを楽しんでいただくとともに、震災の記憶をつなぐ機会としている。さらに、「巣箱観察ワークショップ」では、日本野鳥の会の皆さまに利府町の環境や野鳥の生息についてお話いただいている。平山は「イオンモールが率先して地域を巻き込んだ取り組みを行うことで関わりを深め、さらに地域の方々をつなぐ“ハブ”としての役割も果たしていきたい」と語る。

また、地域のお子さまとのワークショップだけでなく、モニタリングや定期観察も積極的に実施している。2024年3月には、モニタリング用のカメラを設置。カメラの映像を確認しながら、手持ちカメラでも撮影して観察を続けた。11月に巣箱を取り外すと、30個の巣箱のうち3〜4個が巣づくりに使われていることが確認できた。
有馬は、「今後は巣づくりからヒナの誕生までの一連の流れをお客さまに映像で見ていただけるように、モニタリングを強化することが課題」と話す。平山は、「イオンモールを普段からご利用いただいているお客さまを含め、広く発信していきたい」と意気込む。
地域の方々が自作し設置した巣箱に愛着を感じ、シジュウカラを見にくることをきっかけに、イオンモール新利府に足を運んでくださる———。そんな姿を実現するために、今後も継続的に保全活動に取り組んでいく。

イオンモールの「まちのいきもの+(プラス)」

イオンモールでは、緑あふれる環境に配慮した施設づくりを行い、さまざまないきものが共生する豊かな未来をめざして、生物多様性の保全に力を入れています。その取り組みの一つとして、「いきもの共生事業所®認証(ABINC認証)」の取得を推進。同認証は、「一般社団法人企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)」が作成・登録した「いきもの共生事業所®推進ガイドライン」に基づき、生物多様性に配慮した緑地づくりなどの取り組みを第三者的に評価・認証するもので、現在イオンモール新利府北館を含めて全国で22モール※が認証を取得しています。 ※2024年2月時点


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