イオンモール CSRレポート2018
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■イオンモールのCSRレポートに第三者意見を寄せるのは今回で4回目となります。本レポートは「地域とともに『暮らしの未来』をつくるLife Design Developer」を経営理念とするイオンモールの多角的な活動を、ISO26000をふまえた5つの柱に沿って報告しています。今回のレポートより、個別の取り組みとSDGs(持続可能な開発目標)との関わりも示され、グローバルスタンダードに沿った報告書となっています。また、多様なステークホルダーの生の声も数多く掲載されており、CSRコミュニケーションの点でも優れた報告書となっています。■トップメッセージにあるように、これからの商業施設には、リアルな体験を通したふれあいや思い出が生まれるコミュニティとしての役割が強く求められます。2016年度における国内B to C(消費者向け)のEC市場規模は15兆1,358億円となり前年比で9.9%増加しました。今後は、Eコマースにはない価値の訴求が重要となってくるでしょう。特集1(p.12-p.15)では、イオンモールが今年度より「人生の素敵な思い出をつくる場所」としての「ハピネスモール」の活動を本格化したことを紹介しています。「楽都・まつもとライブ」の開催、健康を増進するモールウォーキング活動、落語やオペラ鑑賞会、地産地消の推進や地域PRイベントなど、いずれも地域の歴史や特性に合わせた取り組みとなっている点が特徴です。お客様にモールに足を運んでいただく上記の取り組みは、イオンモールの本来の事業活動にプラスであるだけでなく、地域社会への継続的な貢献という点から見ても非常に重要です。地域と共同で価値を創出し、持続的な成長を目指すCSV(Creating Shared Value)の観点から活動を推進していることを高く評価したいと思います。■最も高く評価したいのは、「人と環境に配慮したモールづくり」が国内においても海外においても着実に進展していることです。CSR TOPICS(p.10-p.11)にあるように、2017年11月、イオンモールの2つの施設が人間の健康と快適性の評価である「WELL認証」の適合性事前検証を実施しました。また、従来より温室効果ガスの排出削減に積極的に取り組んでおり、2017年には京都市と大阪府から優良事業者として認定されました。その他、近年国内でオープンしたモールでは共用部のLED採用率100%を達成、自社が管理・運営する全モールに電気自動車充電器の設置を完了するなど、環境保全面で確かな実績をあげています。同様に、インドネシアや中国など海外で展開するモールにおいても環境・安全への配慮を徹底しています(p.21)。2018年4月現在、イオンモールは日本国内、中国、アセアンに約180拠点を展開しています。このような大企業が「モールは人と環境に配慮したものであるべきだ」という価値観を持ってモールの企画・建設・管理・運営に携わることは、世界のモール事業者に大きな影響を与えることでしょう。ESG評価に優れた企業を選別して算出する株価指数構成銘柄にも複数選定されたリーダーとして、今後も業界を牽引していただきたいと考えます。 今年度のイオンモールのCSR活動においては、昨年度に引き続き、ダイバーシティの推進について着実な進展が見られます(p.30)。女性管理職数・割合ともにさらに増加して「多様な人材が活躍する企業」へと進んでおり、海外の現地法人ローカルスタッフ人数の増加や中国の7つのモールでは現地法人スタッフが最高責任者を務めるなど「組織・人材のグローバル化」が見て取れます。企業主導型保育事業としての保育施設の拡充、「きらきら休暇制度」の導入など、多様な人材が働きやすい環境への整備も進んでいます。企業が持続的に成長するためには、組織を活性化させる多様な人材の活用が不可欠です。人材のダイバーシティやワークライフバランスに関するイオンモールの真摯な取り組み姿勢を高く評価したいと思います。■昨年度も要望しましたが、イオンモールは、環境に配慮したモールづくりでは国内外でトップレベルに位置していますし、地域貢献や働く人々への配慮に関しても高いレベルに到達しています。次年度はぜひ、レポートにアクションプランを掲載していただきたいと思います。「5つの柱」でまとめているCSR項目のうち、何をどこまで実施するのか。それぞれについて目標を設定し、実際に行った活動の概要を示すとともに目標達成の度合いを確認するというPDCAサイクルを回すことは、イオンモールのCSR活動のさらなる推進に役立つはずです。第三者意見【プロフィール】青山学院大学経営学部卒。東京大学大学院経済学研究科で博士号取得。大阪市立大学助教授、立教大学経営学部助教授などを経て2009年4月より現職。主な研究テーマは、流通論、CSRとブランド価値、小売経営と消費者行動。著書に『サステナブル・ライフスタイルナビゲーション』(日科技連出版社、2007年)など。要望したいこと立教大学経営学部 教授高岡 美佳 氏2018 AEON MALL CSR 46評価できること

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