社長メッセージ

社会の変化を機会と捉え、地域との共創を軸にパラダイムを転換し、既存事業のビジネスモデル改革と新たな価値創造に挑戦 社会の変化を機会と捉え、地域との共創を軸にパラダイムを転換し、既存事業のビジネスモデル改革と新たな価値創造に挑戦

イオンモールのめざすべき姿

各国でポストコロナへの移行が進み、売上・集客は改善基調で推移していますが、経済情勢や社会環境の変化、またお客さまの価値観・ニーズの変化により、国ごと、エリアごとに新たな課題が顕在化してきています。 このような不確実性の時代において、常にお客さまからの期待に応え、 今まで以上に地域から支持される企業への変革が求められています。商業施設の枠組みを越えて、地域やパートナー企業とつながりを深めていくことで、既存事業のビジネスモデル改革および新たな価値創造に挑戦していきます。

2030年ビジョン~地域共創でめざすもの~

本年、新たに2030年ビジョン「イオンモールは、地域共創業へ。」を策定しました。2030年 ビジョンは、当社がディベロッパー事業としてどのような未来をめざすべきかを設定したものであるとともに、経営ビジョン「アジア50億人の心を動かす企業へ」を実現する過程として 2030年時点に「あるべき姿」を設定したものとなります。地域共創業とは、同じ志を持つ、 すべての人たちと、「つながる」を創造し、広げ、深め、持続可能な地域の未来につながる営みを共創するという、企業としての、またイオンモールグループ従業員の一人ひとりの意思と価値軸を示しています。
この数年で、当社がお客さまや地域社会から期待される提供価値は変化し多様化するとともに、当社のパートナーである専門店企業においても事業方針や出店戦略等の考え方は大きく変化しています。そのような背景において、当社は事業活動を通じ、持続可能な社会づくりへの貢献を今まで以上に求められていますが、複雑化した社会において、当社だけで実現していくには限界があります。
そのため、当社が事業を展開するすべての国・地域において、同じ課題意識と、それを解決したいという「志」を持つ、企業や団体、自治体、教育機関、そして、時には個人と共に最適解を共創すること、およびそれぞれの地域にとって最適な暮らしの未来を、ステークホルダーとの共感により実現することを2030年ビジョンとして定めました。

当社が地域共創業へ変革していくためには、企業姿勢として「変えること」、そして、これまで培ってきた経営資産を「活かすこと」、2つの軸をもつ必要があると考えています。
まず「変えること」ですが、存在価値、実行主体、活動フィールドの3つです。当社が各地域に持つ拠点という資産を活かしながらも、商業施設という枠組みを超えた「存在」として地域に新たな価値をもたらしていきます。その「実行」においては当社単独ではなく同じ志をもつパートナーとの共創により課題解決を進めていきます。そして、自社の商業施設にとどまらず、地域のあらゆる場面を「活動フィールド」とし、地域課題への解決策を生み出していきます。

次に「活かすこと」ですが、全国、アジアに広がる拠点と、拠点が持つネットワーク、集合・集積価値、そして、これまで培った、安全・安心・信頼と運営レベルの3つです。まず、当社が保有する日本全国・アジアに広がる有形資産としての拠点や、この拠点同士の独自ネットワークですが、これは他社が今からゼロベースで形成していくことはできない、大きな競争優位性だと考えています。そして、各拠点は地域のプラットフォームとして、人・モノ・情報がワンストップに集まる集合・集積価値を有しており、これは商業以外の別の価値にも活用していけるものです。さらに、日本、アジアで統一的な運営を行ってきた中で培った安全・安心・信頼のブランドと、高水準かつ一定のサービスレベルを担保できる仕組みと企業文化は、他社が得たくとも得られない圧倒的な強みです。これらの要素は、地域共創業として変革を進める上でも競争優位の源泉になるものであり、さらにこの強みを活かしていきます。

これらの「変える」・「活かす」の視点のもと、昨年度から実施している共創プログラムや住宅・収益不動産開発を得意とする株式会社マリモとの資本業務提携、CVC「Life Design Fund」の設立、2024年の物流問題解決に向けた商品の共同配送システムの構築など、2030年ビジョンの具現化に向けた動きはすでに芽を出し始めています。
これからの課題解決には、国やエリアごとの統一的な解決策ではなく、地域ごとに異なる解決策がより一層重視されていくのは間違いありません。だからこそ、これまでの商業施設を中心とした枠にこだわらず、地域毎の課題を解決していく地域共創業への変革を進めていきます。

中期経営計画(2023~2025年)の策定

2020年から長く続いた新型コロナパンデミックは消費者の行動様式を大きく変えました。そこにロシアによるウクライナへの軍事侵攻も加わり、半世紀ぶりにグローバル規模でのインフレが同時発生しています。日本においては、円安の影響も重なりインフレの要因は複雑化しています。
さらに建材の高騰、労働力不足等に起因する建設コストの高騰は、当社のビジネスモデルにおいては、中長期的に大きなインパクトを与えることとなります。単に投資効率を高めるという視点のみならず、未来にとって必要な投資は何かをしっかり考え対策を検討していかなければなりません。
私は社会変化による影響が当社事業にとってすべてリスクになるのではなく、それぞれの地域に焦点をあわせて考えれば、多くの機会も発掘できると考えています。全国一律で事象を捉えるのではなく、地域ごとに抱えている顕在化した課題や、今後発生する潜在的な課題を想定し、その課題への対応をビジネスに変えられるように取り組んでいきます。

新たに策定した中期経営計画(2023~2025年度)では、ESG経営のさらなる進化を図るべく、「国内外におけるリージョナルシフトの推進」「ヘルス&ウエルネスプラットフォームの創造」を取組方針とし、ステークホルダーに対して経済価値、社会価値、環境価値を創出する「真の統合型ESG経営」の実現により持続的な成長をめざしていきます。具体的には、「海外成長マーケットにおける事業機会の発掘と事業化」「国内におけるビネスモデル改革の推進」「既存事業の枠組みにとらわれない新たなビジネスモデルの創出」を成長施策として展開し、成長を支える基盤構築として「サステナブル視点での財務基盤強化と組織体制構築」を推進していきます。

既存事業の枠組みにとらわれない新たなビジネスモデルの創出を推進するには、DXの具現化は重要なテーマであると考えています。テクノロジーありきではなく、実現したい想いが先にあって、それをテクノロジーで解決する「ヒトの想いを中心としたDX」の実現に向けて、あるべき姿を思い描き、それを形にするために取り組みを進めています。
ESG経営の実践は単なる社会貢献ではなく、ステークホルダーにとって、企業が社会・環境問題を機会・リスクとして的確に捉え、課題解決に向けた仕組みや意思をもっているかの判断基準となるものであり、企業としての生き残りをかけた取り組みとなります。お客さまをはじめすべてのステークホルダーが見ているのは、過去や現在よりも、その企業が未来において存在価値があるか否かです。ステークホルダーが求める「社会課題を解決し、経済的価値と社会的価値の双方を実現する企業」をめざしていきます。

サステナブル視点での組織体制の構築

「真の統合型ESG経営」を実現するために最も重要なのは、その取り組みを実行する「人」であると考えます。昨年、イオンモールの2030年ビジョン実現に向けて最も重要なファクターとなる「人」に関する「イオンモール人材・組織ビジョン」を策定しました。
当社の事業は「地域共創業」であると再定義することで、所属部門に関係なく、当社グループで働くすべての従業員が、Life Design Producerであることを再認識し、「地域の暮らしの未来づくり」に関わっているということを意識する必要があります。その上で、「革新し続けるプロフェッショナル集団」として、信念を持ってビジョンの実現に取り組むことが、「持続可能な地域創造」、「持続可能な企業集団」をつくると私は信じています。
企業が持続的に成長していくための最大の経営資源は「人」という考えに基づき人材戦略と、経営理念や成長戦略との連動性についても中期経営計画だけでなくイオンモールの基本的な成長戦略として位置づけ、具体的な取り組みを開示、実行していきます。

当社はイオン株式会社を親会社とする上場子会社であり、ガバナンス面においては、投資家をはじめ、ステークホルダーの皆さまから透明性、公平性が強く求められています。ガバナンス体制強化に向けた取り組みの一環として、取締役会の実効性向上を図るべく、本年5月より執行役員制度を導入しました。経営における透明性・公平性を高めるだけでなく、業務執行責任の明確化と意思決定の迅速化、次世代経営人材育成も含めた組織体制を整備していきます。
また、少数株主にとって、親会社との利益相反が上場子会社における最大の懸念事項であることから、当社では独立社外取締役のみで構成するガバナンス委員会において、支配株主および経営陣から独立した立場から、グループ間取引等の合理性・相当性について議論・検証のうえ取締役会へ答申しており、厳格なチェック体制のもと実効性確保に努めています。
ガバナンス面では、改善すべき点がございますが、ステークホルダーの皆さまとの対話を重ねながらガバナンスの強化を図ることで、企業価値の向上に繋げていきたいと考えています。

ステークホルダーのみなさまへ

2023-2025中期経営計画がスタートしましたが、国内事業においてはポストコロナを機に潮目は変わってきており、最重点課題である集客力の回復に向けた取り組みを強化していきます。また、キャッシュ・フロー創出力が低下した物件の抜本的な構造改革に踏み切るほか、出店エリアのニーズに合わせて、郊外の大型モールの新規出店のみならず、様々な業態の物件開発を通じて収益力アップに向けた取り組みを推進していきます。海外事業においては、成長性の高いエリアへの出店加速とともに、地域の課題を深掘りする中で見出した新たな事業機会の創出にもチャレンジしていきます。
変化のスピードが速い不確実性の時代において、今までのやり方を続け、ただお客さまが戻ることを期待しているだけでは、持続的な成長は到底かないません。世の中の状況や変化に合わせ、よりスピード感を持って、より柔軟に変革を進めていかなければならないと考えています。
企業が変革を進める際には、理念の共有が何よりも重要です。変革へのスピードが求められる局面において、トップダウンで組織を動かす方法がありますが、その方法では組織内で情報伝達を行う過程で指示の内容は薄まって伝わってしまいます。私自身が絶対に譲れない理念を持ち、従業員に対してしっかりと理念を共有できれば、単に指示内容がそのまま実行されるだけでなく、共有した理念が私の想像を超えた成果として返ってくると信じています。理念の共有や想いを伝えることに軸足を置き、マインドセット改革を推進することで、理念を体現できる企業をめざしていきたいと考えています。これは従業員に限ったことではなく、当社に関わるお客さまやパートナー企業、地域社会、株主・投資家の皆さまに対しても、理念を共有することで、共感の連鎖が生み出され、同じ志を持つ全てのステークホルダーをつなぎ、持続可能な地域の未来につながる営みを共創していけるのだと考えています。
これからも地域との共創への取り組みを続け、企業価値の向上に邁進していきますので、これからも一層のご支援のほど、お願い申し上げます。

代表取締役社長
岩村 康次