中国 事業環境変化に対応すべくエリア戦略を再設計
中国では2008年に北京で1号店を開業して以降、北京・天津、湖北省、江蘇省、広東省の4エリアで出店を進め、23モールまで事業を拡大してきました(2024年8月時点)。湖北省の武漢市や江蘇省の蘇州市では、競合他社に先駆けた出店によりエリアブランディングが確立できており、お客さまからの高い支持も得られています。2024年には湖南省長沙市に初出店し、今後も成長性の高い内陸部を中心に出店を継続していきます。中国における当社の強みはサービス面とソフト面にあります。広大な平面駐車場の配置は、他社施設にはない差別化要因です。また、館内の快適さや清潔さ、お客さまに対するサービス、出店企業とのリレーションシップ、計画的なテナント入替による鮮度の維持等、日本のモール運営で培った強みは、中国の競争環境でも優位性を発揮できます。
経済環境の変化や新型コロナでの経験を経て、中国でも「モノ消費」から「トキ消費」を重視する傾向へとニーズの変化を感じています。中国では夜間の外食利用のニーズが高いことから、今後の開発物件では、館内と館外をつなぐハイブリッドモールをつくり、営業時間の制約を受けないゾーニングを展開することで夜間の外食需要に対応していきます。
足元では不動産市況の低迷等による中国経済の減速に伴い、当社モールでもエリア間で成長性に差が生じてきています。競争環境は激化し、商業施設の淘汰も顕在化してきています。こうした事業環境では、エリア毎の動向をしっかり見極め、中国事業全体の戦略の再設計が必要な局面であると認識しています。稼げる店舗はさらに稼げるように追加投資を行う、課題のある店舗はしっかりと成長軌道に戻していく等、投資効率も十分に意識しながら経営資源の配分を再検討していきます。
アセアン ベトナムでは出店エリア拡大により盤石な成長基盤を構築
アセアンでは2014年にベトナム・ホーチミン市で1号店を出店、その後、カンボジア、インドネシアで出店を進め、3カ国計14モールまで事業を拡大してきました(2024年8月時点)。2019年には成長性の高いベトナムを最重点出店エリアに定め、南部のホーチミンエリア、北部のハノイエリアを中心に出店を重ねてきました。ベトナムでは都市郊外に大型商業施設を開発する競合は少ないため、当社モールの認知度は高く、エリアドミナントの形成により競争優位性が発揮できています。2024年度には中部エリアのフエ市へ初出店しますが、地方都市での成功は今後のベトナムの出店戦略上キーポイントであり、さらなる成長に向けた礎を築いていきます。
インドネシアでは、ここ数年、新型コロナの影響を大きく受けましたが、本年度から消費動向は回復傾向にあり、既存モールの収益性改善に向けた取り組みを強化していきます。人口や市場規模を勘案すると将来有望なエリアであり、引き続き、ジャカルタ郊外を中心に出店を進めていきます。
カンボジアでは、プノンペンの3モール体制でのエリアドミナンスをさらに強固なものとしていきます。昨年シハヌークビルに開設したロジスティクスセンターでの物流事業も含め、新たな事業創出にもチャレンジしていきます。
アセアンではベトナム進出から10年が経過し、経済・社会情勢は大きく変化してきました。どこに経営資源を集中投下していくか、エリア戦略の再設定も含めた新たな成長ステージに差し掛かっています。今後の人口増加および高いGDP成長が見込める未進出の国・エリアにおける市場調査も含め、次の成長エリアに軸足を伸ばしていく活動も進めていきます。
成長の基点である人的資本投資を重視
海外事業の成長戦略は、やはり成長エリアへの出店拡大が柱となります。これを実現するには現地従業員の活躍が不可欠であり、現地従業員に対する採用・育成の強化に加え、幹部への登用も積極的に進めていく方針です。また、国の垣根を超えた人事交流により、多様な価値観・ノウハウを交換することは、当社の組織強化につながり、更なる競争力の源泉になると考えています。イオンモールがアジア圏においてさらなる存在感を発揮していけるよう、海外の人的資本投資にも着実に取り組んでまいります。
取締役 海外事業担当
礒部 大将