日本の小売を代表するイオングループという巨大な企業集団で主要事業を担う当社の社内取締役は、とても大きな役割を担っていると考えます。私たちが事業のスケールを活かしながら、年間10億人を超えるお客さまの期待に応え、環境と社会へ貢献し、持続的に企業価値を創出していくためには、執行と監督のバランスが取れた経営により、取締役会の実効性を高めることが鍵だと考えます。
取締役会では、お客さまがモールに求める価値が変化していることを踏まえ、今後めざしていく事業の方向性について多角的な視点から闊達な議論がされています。また、執行と監督のバランスという点では、当社は独立社外取締役のみで構成するガバナンス委員会を設置して、取締役会の経営監督機能の強化を図りつつ、バランスの取れた経営が実践されていると評価しています。
社長を委員長とする経営戦略諮問委員会では、中期経営計画をはじめ2030年を見据えた中長期的な成長に向けた業績指標の設定やサステナビリティ対応等について、社外取締役全員が参加して積極的に執行サイドと意見を交わし、助言・提言を行うなど踏み込んだ議論ができていると感じています。
社外取締役に対するサポートという点では、国内外のモール視察を通じて、現場を見て従業員と対話をする機会をより多く確保することで、現場における課題や状況を把握できています。
ガバナンス委員会における監督状況について
私が委員長を務めるガバナンス委員会では、特にグループ会社間の利益相反取引について、公平性や合理性の評価を行いますが、これまでの慣習に縛られず、客観的な視点から議論しています。今後さらに議論を深めていくために、少数株主の視点から関心が高いと思われる事項や疑問点などを、各委員が出して議論を行い、合理性や正当性を確認していく。そうしたプロセスをきめ細かく実行していくことがさらなるガバナンスの高度化に繋がっていくと考えます。
上場子会社であることの意義について
親子上場に対する市場の関心が高まる中、そのデメリットが強調されることが多いのですが、同時にメリットを伝えていくことも重要と考えます。
上場企業として、独自の資金調達ができる、従業員のエンゲージメント向上につながるといったメリットがあるのはもちろんのこと、情報開示の機会が多くなることで当社のファンを増やすことができ、また、独立した立場から判断できることで意思決定のスピードを上げることができるといった点は当社の企業価値向上につながり、結果としてグループ全体の価値向上にもつながります。
事業の面でも、例えばイオンモールに来られるお客さまにはイオンでの買い物を目的とする方が多くいらっしゃいますが、物販、飲食、エンタメ等の専門店も同時に利用していただくことができるので、お客さまが得られる楽しさや価値は2倍以上になります。さらに、グループポイントの活用などにより、共同PRも積極的に行うことができます。グループシナジーという観点からのメリットを分かりやすく伝えて、市場の理解を深めていくことが必要だと感じます。
企業価値向上に向けた情報発信について
企業価値の向上については、取締役が自ら発信者となって投資家と対話を行うなど、IR活動に積極的に関わっていくことが大切です。当社の成長ストーリーを明確に示すことはもちろん、地域の期待に応える姿勢や、地域との共創の取り組みをもっと分かりやすく情報やメッセージとして発信しなければなりません。イオンモールが持つ独自の価値や可能性を通じて、お客さまや株主の皆さまに「イオンモールと一緒にやっていきたい」という思いを持っていただけるよう、社長をはじめ、社内取締役からもしっかり発信してもらうことを期待しています。
取締役
ガバナンス委員会 委員長
榎本 知佐